パイプの愉しみ方

パイプの愉しみ方

有思所(5)−渡航歴50回以上を重ねて−

仕事柄、渡航の機会は多い。西欧諸国中心であるが、学生時代から優に50回を超えたはずである。

そんな私が恥ずかしながら、今回のオランダ出張で初めて気がついた。

僕は、「灰皿(ashtray)のある所なら、煙草を吸う権利がある」と考えていたが、大きな誤解だった。 欧州のカフェやレストランのテラス席には、必ずといっていいほど灰皿が置いてある。 当然、僕はパイプを取り出し、燻らし始めた。とたんに隣近所の席から、話し声が聞こえてくる。小生は、オランダ語は解らない。ドイツ語の変形としか考えていない。きっと「今どきパイプよ、珍しいな」とでも言っているだろうと推察していたが、どうやら違うようだ。「煙草が迷惑だ」と文句を言っているらしい。

ヨ−ロッパ、特に南欧以外の人々は、短い夏に競って太陽を浴びたがる。 その意味で、わざわざテラス席を選ぶ人がいる。自然の中で日光浴を愉しむ彼らの前である。煙草を吸う僕は、 周囲の人間が煙草を吸っているか否か、先ず考えるべきであった。

何度も欧州に足を運んでいながら、僕はまったくベネルクス諸国の事情を理解していなかった。

困ったことに私は、開店したばかりの、誰もいないカフェテラスの最前列で、ゆったりとパイプを燻らすのを欧州訪問の至上の楽しみとしている。

ところが店の都合で、テラス席の準備は、一番後回しだ。 願わくば、テラス席を真っ先に準備し、客が増えるまでパイプがくゆらせるようにしてもらえないだろうか。

<ホテルぐらいなんとかしてほしい>

このように渡航歴を重ねた小生にも、未だに理解できない事がある。喫煙室がスムーズに取れないのだ。今回も出発3ヶ月前に、旅行会社を通じてsmoking roomをリクエストしておいた。

ところが、現地のホテルに着いて確認すると「no smoking roomしか空いてない」とスタッフは平気でのたまう。 当方にとっては、死活問題である。「直前に予約した訳じゃない。 3ヶ月も前の予約だ。もう一度確認してくれ!」と、ここは当然、気迫を見せる。

ようやくチーフらしき人物が「今日はいっぱいだから、明日から変更する」と答えた。

西欧人特有の鷹揚さなのか、単にルーズだけなのか、節約して3星ホテルレベルを選んだ僕がいけ なかったのか。

そんな事はない。過去に4星ホテルでも同じ目にあった事が何度かある。

5星ホテルにsmoking roomは、ほとんどないから、宿泊しないのでかまわないが、せめて自分が金を払ったホテルの喫煙ルームではリラックスして一服くゆらせたい。
昔気質の愛煙家