パイプの愉しみ方

パイプの愉しみ方

イタリア人パイプ作家

パイプたばこにドイツのセリーニがある。このたばこは、ドイツ製にもかかわらず、作り込みが徹底的にイタリアン。ブレンドのメインは、トスカーノとウンブリア産ヴァージニアで、ケーシングに使われているオレンジリキュールのオレンジもイタリア産のレッドオレンジだ。

このたばこをイタリアの展示会で喫っていた時、陽気なイタリアンを思い出す。さるパイプ作家が、「さる」といってもエテ公じゃない。猿がたばこを吸っている姿をテレビで見たことはあるが、パイプを作ったという話は聞いていないし、見てもいない。

その彼はトイレに行く前に手を洗う。

「それは違うよ!トイレを出るときだとう」と言うと、彼の理由は、パイプ製作中にトイレに行くとき、まず手を洗って、作業着である上着をめくり、ズボンの社会の窓を開ける。そうしないとズボンも下着も汚れてしまうということだった。因みに、イタリアのパイプ作家達の作業着は、日本で医者が着ているような長めの上着だ、それもブルー。

彼は先に手を洗うことが身につき、普段でもそのクセが出てしまうという。そうだろうパイプを作っているときは、ブライヤーの粉や染料で汚れた手をしているのだからうなずける。

しかし、隣にいた奥さんが、それでもトイレから出る時は洗うのが普通だといった。するとその作家は、、、以下の話は想像にまかせるが、私は、パイプ作家の肩を持って彼の意見に賛同した。奥さんは「オー・マンマミーア!」と、あきれた顔で我々二人を睨んだ。私は勿論、笑いながら彼女の視線を外したのはいうまでもない。

ジョンシルバーパイプクラブ 柘 恭三郎