パイプの愉しみ方

パイプの愉しみ方

不思議なパイプ煙草「震電」

日本パイプクラブ連盟事務局

私のパイプ煙草コレクションに、不思議なというべきか、珍しい図柄のものがある。
西暦2006年のチェコ・マリアーンスケ・ラーズニェ(旧ドイツ領マリエンバド)で開催した第11回パイプスモーキング世界選手権大会に参戦した際、途中、立ち寄ったプラハのたばこ屋で買い求めたものだ。

プラハ市内をパイプ仲間の友人と連れ立って物見遊山でぶらぶら散歩していたら、パイプ煙草屋を見つけたの。冷やかし半分に覗いてみた。裏店の数坪程度の狭い店内だったが、天井まで商品のパイプ煙草が積み上げられていて、なかなかの品揃えに感心した。店主は30代と見受けられる若い男で、愛想が良かった。我々を日本人と看て取ったらしく、にっこりして「こんにちは」と日本語で挨拶したので、我々も「こんにちは」と挨拶を返した。

下手な英語でパイプ煙草について色々と話したが、どんなことを話したかは覚えていない。冷やかしでは気の毒に思い、何種類かの缶を適当に見繕って購入した。彼が「どんな葉が好きか」と聞いたので、私が「芳醇なラタキア葉の味が好きだ」と答えたら、彼が薦めたのが Stanislaw Pure Latakia だったというおぼろげな記憶があるが、定かではない。

帰国してそのまま引き出しに放り込んでいた。昨年、引き出しを整理しているうちに、缶のラベルにふと気付いた。
「この飛行機のマークは日本軍の日の丸ではないか」


「KYUSHU J7WI Shinden とある。J7W1は意味がよく判らない。KYUSHUは九州だろう。Shindenは戦闘機の震電だろう」と見当がついた。

戦闘機 震電をインターネットのウィキペディア(超古代文明)で調べると、戦史に詳しいどなたかがこういう説明をなさっていた。

震電(しんでん)は第二次世界大戦末期、日本海軍が開発していた単発単座の試作局地戦闘機である。機体後部にプロペラ、機首付近に小翼を配した独特の機体形状は“前翼型(他にも先尾翼型、エンテ型などの呼称があるが本項では便宜上「前翼型」の表現に統一する)”と呼ばれるもので、B-29迎撃の切り札として期待されていた。1945年(昭和20年)6月に試作機が完成、同年8月に数度の試験飛行を行った所で終戦。実戦には間に合わなかった。機体略号はJ7W1。

多くの写真も掲載されている。6翅のプロペラに特徴がある。
http://image.search.yahoo.co.jp/search?rkf=2&ei=UTF-8&p=%E9%9C%87%E9%9B%BB+%E6%88%A6%E9%97%98%E6%A9%9F

 これに間違いない。
KYUSHUは製造会社の「九州飛行機」。意味が判らなかったJ7W1は機体の略号だ。さらにインターネットで調べると、今でも市販されているようで、チェコの煙草屋が、ネット通販していることも分かった。

http://www.etrafika.cz/kosik
http://www.etrafika.cz/detail/3225/dymkovy_tabak_stanislaw_pure_latakia_50

チェコやハンガリー、オーストリアなどのミリタリーショップを覗くと、第二次大戦関係のものが人気で、意外なことに日本軍関係のものも結構置いてある。同じ枢軸国軍側で連合軍と戦った誼なのだろうか?「無敵の日本陸軍」とかいう名前だったか、そういう命名のコンピューターゲームも数年前にハンガリーで見て驚いた。熱心な日本軍マニアがいることは間違いない。

それにしてもチェコのパイプ煙草の図柄に、どういう意図で日本軍の幻の戦闘機「震電」を採用したのだろうか? ゼロ戦などはあまりにも有名だが、実戦に間に合わなかった「震電」となると、相当なスーパーマニアだろう。

詳しい事情をご存じの方がいらしたら、ご教示頂ければ幸甚です。