パイプの愉しみ方
安全健康喫煙パイプ 開発譚 第一回 「起」
「パイプはキザだ」 
              若い頃は、ずっとそう思っていた。 
              「気障」、漢字ではこうなる。「気にさわる」から「気障」。 
              「格好つける」「おしゃれを決め込む」という普通の解釈よりよほど厳しい意味になる。 
              なにが気に障っていたんだろうか。ふと考えてみた。 
20年ほど前までは、街中でもパイプ愛好者をよく見かけた。 
              40年ほど前の学生の時代は、ジャズ喫茶などに跋扈して、ジャズ聴き特有の頭、上半身の揺らしとともに、パイプも揺れていたっけ。 
秋の柔らかな午後の銀座の街をゆったりと歩み、時折、ギャラリーをのぞき込む中年の紳士とご婦人。紳士の左手には大抵はパイプがあった。 
              ところが、何故か他人が吸ったパイプ煙草の匂いには良い思い出はあまりない。 
              大抵は甘ったるい、まか不思議な臭いで、むせそうになるのがオチでしたね。 
              やはり気に障っていたのである。 
ジャズのフレーズに上半身をシンクロする輩は、どうも信用できない感じがしていた。
              上品なご夫婦に見とれはしたものの、火のついた煙草はどうするんだろう、あのまま店に入っちまうのかしら……
              他人が吸ったパイプ煙草の不思議な香りには、なんとなく「お高くとまっている」雰囲気が醸し出されていた。
              どことなく「ひっかかるもの」があるのが、私にとっての「パイプ」なのだった。 
その私が、日本パイプスモーカーズクラブに昨年入会させて頂き、なおかつ新案のパイプを考え出し、今では「パイプ煙草以外は煙草じゃねーや」とばかりにキザを決め込むようになった。 
              そんなこんなを少しまとめてみたいと思います。 
              これからしばらく、お付き合いのほどよろしくお願いいたします。 

      