パイプの愉しみ方

パイプの愉しみ方

Facebookとコムコブの話

日本パイプクラブ連盟事務局長 梶浦恭生

今年の初めにソーシャルネットワーク(SNS)のfacebookに入会した。アメリカに駐在していた息子と連絡をとるのが便利であったためである。SNSは日本ではtwitterやmixi が有名で、facebookはあまり使われていないようだ。facebookは実名登録が条件である。 SNS上ではハンドルネームでやりとりすることがあたりまえの日本では、実名を出してコミニュケーションをするfacebookは日本人はなじまないと言われている。実名交信をあまり好まない日本人のせいか、それとも日本ではmixiとtwitterより後発だったためか、日本ではfacebookは伸び悩んでいると聞く。しかしながら世界ではfacebookの登録者はものすごい勢いで増え、毎年数千万人のオーダーで増加しており、今では登録会員が6億人に近づき、インド、中国に続く、世界第3位の人口の国家が誕生したと騒がれるほどの大勢力のネットワークとなっている。

facebookに参加した当初はあまり知り合いもふえなかったのが、プロフィールの登録欄にパイプを咥えた写真を使ってみたら、世界中から友達になりたいとの申込みが殺到し、全く驚かされた。英語が会話の主体だが、書いてある言葉が全くわからないこともある。名前から判断すると東欧、南欧などやロシア圏等の人も多くおり、本家のアメリカや英語圏以外にfacebookが世界中にネットワークを拡大していることがよく判った。

友達になりたいと連絡があった多くの人は、当然のことながらスモーカーである。多くの会員がパイプを咥えたり、シガーを燻らしている顔写真をプロフィールの写真に使っている。中にはパイプそのものをプロフィールに掲載している人もいて、パイプの愛好者が世界中に数多くいることを改めて実感した。

facebook内の組織に、International Smoking Saloonというパイプやシガー愛好者の交流組織がある。全世界で約40名のメンバーがおり、小生もその端くれに加わっている。
パイプに関する情報交換や、パイプ作家の会員も多いので新作発表が行なわれたり、写真やUチューブの画像が流されたりする。 その主宰者一人のポルトガル人からのある日のメッセージに「愛用している“com-cob”をかかえ週末に別荘に行った。そこで自分でブレンドしたミクスチャーをcom-cobでクールスモーキングして、実にうまかった」とあった。

com-cobとはどんなパイプなのだろうかと色々と想像して見た。戦後流行ったといわれるビランのコブでもあるまいし。

その話をfacebookで知り合ったフロリダのマイアミに住むアメリカ人の弁護士に話をしてみたところ、com-cobを1本送ってくれるといってきた。届いたパイプをみてみたら、ごく普通のコーンパイプだった。

comとはcornのことだった。小さな字体で通信するfacebookなので“corn”の後ろの2文字“rn”を早とちりして“m”と読み違えてしまったわけだ。老眼鏡を買いなおさなければダメということらしい。コーンパイプは日本ではマッカーサー元帥が厚木の飛行場に降り立った時に咥えていた写真で有名であるが、安物イメージもあり、喫っている人を余り見かけない。

コーンパイプはアメリカの中央部のミズリー州のある町だけで作られている。それ専用に開発され育てられているとうもろこしを材料としている。コーンパイプの製法や由来等は日本パイプクラブ連盟が出版した「パイプ大全」に詳しく記載されており、その中で、コーンパイプは正式には「コーンコブ・パイプ」と呼ぶと書いてあった。但し、何故「コーンパイプ」ではなく、「コーンコブ」と呼ぶのかは書いていない。三省堂の厚い辞書にもコーンコブ=パイプと出ているだけである。

コーンコブ・パイプは海外では軽くて、安直に扱うことができるというので結構人気があるそうである。とうもろこしの軸はすぐ焦げてしまうが、乾燥したとうもろこしに石膏を染みこませる方法を開発して耐久性を上げ、同時にボウルの表面を滑らかにすることに成功、ミズリーメアシャムと命名して販売、その手軽さと価格の安さで、全世界に広がる商品に育ったという。その会社は社名もMissouri Meerschaumと変えた。

マッカーサー元帥はこの会社に自分でデザインして特注し、愛用していたといわれる。レイバーンのサングラスをかけ、長大なコーンパイプを咥えた姿で厚木飛行場に降り立ったとき、日本人はなにやら変化の到来を感じ、強烈な印象を持ったのであろう。しかしマッカーサー元帥の有名になったコーンパイプ姿も、どうやらデモンストレーション用だったようで、元帥は普段はごく普通のブライヤーパイプを喫っていたと、くだんのマイアミ在住のアメリカ人弁護士は言っている。

弁護士先生から折角送ってもらったコーンコブは、咥えていて大変軽いし、結構クールスモーキングができるし、落としても瑕もつかないので、気に入っており、今では飼い犬の散歩の際に咥えるパイプとして重宝している。