キセル・シガ−の愉しみ方

キセル・シガ−の愉しみ方

ハバナ葉巻紹介の決定版

葉巻と云えばハバナ。ハバナと云えば葉巻。キューバ産のハバナ葉巻は葉巻の代名詞と云っても良かろう。中南米のドミニカ、ホンジュラス、あるいはフィリピン、最近ではインドネシアあたりでも良質の葉巻が生産されるが、最高級品はやはりハバナ葉巻である。

そのハバナ葉巻を紹介する決定版の書「Discover Habanos Vol.2 ハバナ・シガー、紫煙の誘惑、ふたたび」と云うやたらと長い題名の本が現代書林からこのほど出版された。

2012年の新作から27ブランドの全葉巻情報を掲載。オールカラー&シガー原寸表記というから、ハバナ葉巻を極めてみたい、あるいは薀蓄を深めたいと思う真のシガー党は座右に置いておきたい書物である。
http://www.pipeclub-jpn.org/book/book_10.html#book46

私事にわたるが、書評子が初めてハバナ葉巻と出会ったのは、今から40年ほど前だったと思うが、出張先のモスクワのレニングラーツキー駅のキオスク。当時はキューバ産の葉巻は米国が厳しく禁輸しており、西側諸国ではなかなか手に入らず、日本でも安月給ではなかなか手が届かない高嶺の花だった。ところが共産国のソ連ではハバナ葉巻が安く出回っていたのである。1本が1ルーブル(当時は1ルーブル=400円)くらいだった記憶がある。

日本から持参のハイライトを吸い切り、やむなく吸い始めたソ連の辛いマホルカ煙草には流石に飽きて、何か良い煙草はないかと期待せずにキオスクをふらりと覗いたら、ハバナ葉巻がばら売りされているではないか。宝物を掘り当てたと思った。

私は店に置いてあったハバナ10本程度を買い占めて、レニングラード行きの夜行特急列車の中でじっくりハバナを満喫した。

「ハバナはこんなに美味いのか!!」。その玄妙なる味に感激した私は、以後、必ずキオスクを覗いては、ハバナが置いてあると必ず買う習慣が出来てしまった。ソ連でハバナが安く買えると云っても、どこのキオスクにも置いてある訳ではなかった。また1本が1ルーブルほどとあっては、普通のソ連人が気安く買える価格でもなかったと思う。

少しずつ買い集めたハバナだが、帰国する際にはかなりの本数になった。もう時効だろうから白状するが、旅行鞄の奥に忍ばせて税関の目を掻い潜って持ち込んだ。ソ連で買ったハバナをこれみよがしに喫って、愛煙家の友人連に自慢すると、「俺にも是非1本くれよ」と無心される。

全部自分で喫おうと思って持ち帰ったハバナだったが、愛煙家の友人連にお土産代わりに半分以上強奪されてしまった。ソ連土産では、キャビア、蟹缶よりもはるかに喜ばれた。

普段はパイプ。ここぞという時にだけ、大切にしまっていたヒュミドールから1本出して、至福の時間をじっくりと満喫する。愛煙家にとっては最高のひとときであった。

その後は、様々な葉巻を試してみたが、あの夜行寝台特急の中で一人で味わったハバナほど深い満足感を覚えたものはない。

与えられた紙幅が尽きてしまった。色々と本の内容を紹介するつもりだったが、葉巻の一愛好家のつまらない懐旧談となってしまった。ご容赦願いたい。