パイプの愉しみ方

パイプの愉しみ方

紫煙の行方6

岡山パイプクラブ会長 医学博士 砂山有生

煙草本来の姿は、その味を味わい、香を楽しむという優雅な世界でした。趣味の範疇に入ると思います。

しかしながら、現在では、これら優雅な世界の存在は無くなりつつあります。そしてパイプをこよなく愛する我々愛煙家は異端児扱いとなり、世間では変り者といわれるようになっています。

パイプはシガレットと比べて良いことも沢山あるのです。

まず、殆ど灰皿がいりません。吸い殻も出来ません。ロから離していると何時の間にか消え、火事になることもありません。

しかしながら,パイプをうまく吸うことが難しいのも本当です。

パイプをはじめた方がすぐ止めてしまうのは、火がすぐ消えてしまうからです。パイプの中をみても沢山煙草は残っているのです、うまく吸わないとすぐに消えてしまいます。

パイプを長く吸うためにはこつがあります。

1回吸っては3回パイプを吹くことです。

パイプのボウルの中の火は、吸うばっかりだと、煙草の下に潜ってたちまち底まで行ってしまい、そして消えてしまいます。吹くと火は横に広がりパイプより芳しき香と煙が立ち上ります。

吸ったり吹いたりがこつなのです。

絶対に肺までは吸い込まないことです。口のなかで煙を回してくゆらしながら吐き出すことです。これで煙草の本当の旨味は充分に楽しめます。煙草の旨味はクールで冷たくドライでなければ味わえません。

そのためにはゆっくりと吸い、そして吹き、パイプの中を乾燥した状態にしておかなければなりません。

そうしないと苦いジュース(ヤニ汁)がロの中に入ってきます。パイプが美味しくない、下手な方法です。

一本のパイプをずっと使い続けて、ボウルの中が湿ってしない煙草が美味しくなくなることを考えると、少なくとも2本のパイプを交互に使用した方が理に適っているのです。一度試してみては如何でしょうか。

タバコを美味しく吸うための技法を習得するための一助として世界各地、日本各地で定期的にロングスモーキング選手権大会が行なわれています。日本の多くのパイプクラブでも例会ごとにロングスモーキングのミニコンペを開催しているところが多いのではないでしょうか。

まず、ビリヤード型のパイプに3グラムのたばこを5分間で詰め込みます。この時の詰め方が結構、難しいのですが、合図と同時にマッチで着火します。マッチは二本使ってよい規則です。着火の制限時間は1分です。その間にもし火が着かなかったり、消えたら記録は1分です。

3グラムのたばこはシガレットほぼ3本分にあたります。火が消えたら,煙が出なくなりますのでそこで退場です。

手を挙げて自分の記録を申告し席を離れます。

そして選手権大会の会場は、最後はたった一人が残ります。この方が優勝者となり、記録への挑戦となります。

自分の火が消えたこと自己申告して、そっと席をたつ。なんとも紳士的な大会でしょう。

現在、何でもスピードが早く記録も短くなっている昨今、のんびりと長時間の記録を争うなんて、そういう大会があっても良いじゃないですか。

今年で、全日本パイプスモーキング選手権大会は37回を数えます。

我が岡山パイプクラブは、日本パイプクラブ連盟や他のパイプクラブに色々とご迷惑をお掛けしておりますが、全日本の選手権大会では、そこそこ健闘しております。個人優勝、団体優勝、レディース優勝の三冠を飾ったこともあります。岡山パイプクラブの会員は真面目な人が多く、ロングスモーキングのやり方を色々と研究しております。これが比較的、好成績につながっているのだと思います。

会長の私は、いつも記録は1分。長時間火が消えないように集中して吸うのはストレスがかかります。途中で緊張のため気分が悪くなって倒れたりすることは医師としても恥ずかしいことなので、火を点けた時点で消してしまいます。

私の記録は、98分なにがしで100分の壁が破れないままで、今まで来てしまいましたので、今後新しい個人記録が出ることはないでしょう。

今後、高齢化社会が訪れます。

煙草を吸っておられる老人も肩身の狭い思いをして吸っておられるのです。出来ればあまり禁煙を指導しないで頂きたいものです。

私はずっと吸い続けるでしょう。

ただ、シガレットを吸う方の中にはマナーが宜しくない方もおられます。これは社会の秩序と調和を守るよう、特に若者に厳しく注意、指導しなければと思っております。